
北陸新幹線が金沢まで延伸開業する前までの首都圏〜北陸間の鉄道でのルートは上越新幹線で東京〜越後湯沢駅間に乗車し、越後湯沢駅でほくほく線経由の特急はくたかに乗り換えて行くというものでした。
しかし、北陸新幹線金沢延伸開業後はそのルートは使われなくなることにより、上越新幹線高崎〜越後湯沢間の利用者が減少するのはもちろん、首都圏から新潟方面へ行く人よりも金沢方面へ行く人の方が増えてしまう可能性があると思われていたため、上越新幹線の地位が北陸新幹線よりも低下するのではないか?という懸念が新潟県内の上越新幹線沿線地域でありました。
これは「2014年問題」とも呼ばれ、沿線自治体で「上越新幹線活性化同盟会」が結成されていたほど新潟県内では大騒ぎしていたのです。
しかしながら、北陸新幹線金沢延伸開業から9年以上経過した今、実はそんなことはなかったということがわかりました。
<更新履歴>
2024年11月2日 動画を追加
2024年10月29日 初投稿
その理由は上越新幹線と北陸新幹線それぞれの「平均通過人員」でわかります。
「平均通過人員」とは交通機関における1日1kmあたりの平均輸送量のことを指しており、各路線・各区間でどれくらいの乗車人員がいるかということがわかります。

JR東日本は上越新幹線全線と北陸新幹線(高崎〜上越妙高間)、JR西日本は北陸新幹線(上越妙高〜金沢間)の平均通過人員をそれぞれ公式ウェブサイトで掲載しています。
掲載URLは以下に載せておきます。
・JR東日本 路線別ご利用状況(2010〜2014年度)
・JR東日本 路線別ご利用状況(2014〜2018年度)
・JR東日本 路線別ご利用状況(2019〜2023年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2016年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2017年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2018年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2019年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2021年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2022年度)
・JR西日本 区間別平均通過人員および旅客運輸収入(2023年度)
それらをまとめてみたのでご覧ください。

JR東日本では北陸新幹線金沢延伸前の2010年度〜2014年度の平均通過人員も掲載しているのでそれも参考として載せました。
この期間中(上表の赤枠)は上越新幹線高崎〜越後湯沢間は北陸新幹線高崎〜長野間よりも平均通過人員が多いことがわかります。
これは首都圏〜北陸間の鉄道でのルートが上越新幹線東京〜越後湯沢間を経由していたためです。


2015年度以降は北陸新幹線が金沢まで延伸開業し、首都圏〜北陸の鉄道でのルートが北陸新幹線に移行したため、上越新幹線高崎〜越後湯沢間は北陸新幹線高崎〜長野間よりも平均通過人員が少なくなったことがわかります。

しかし、上越新幹線越後湯沢〜新潟間を見ると、北陸新幹線が金沢まで延伸開業しても、2018年度までは増加し続けていることがわかります。
北陸新幹線については長野〜金沢間いずれも2015年度は開業ブームの影響もあり利用者は多かったのですが、翌年2016年度は利用者が減少し、2019年度まで横ばい状態でした。
「金沢には有名な観光地がたくさんあるんじゃないのかw」とか「外国人観光客がたくさんいるのにどうしたんだw」という感じがしますね。


ちなみに駅別の新幹線利用者数はこんな感じです(2012年以降のデータしかなかったので2012年以降を載せています)。
どの駅も2018年度までは横ばいか増加しているかのどちらかであることがわかります。
特に新潟駅の増加が一番多いですね。
単純にビジネス客や観光客が増えたのはもちろんですが、新潟市内では平日には学術大会や様々なイベント、休日にはコンサートや競馬、スポーツの大会、その他様々な大規模イベントなどが開催されることが多いのでその影響で増加し続けていったのだと思います。
これは2018年まで新潟市の市長だった篠田氏の政策が良かったからだと思いますし、その良い政策によって新潟市のアピールがうまくいったから、利用者増につながったのだと思います。
また、2019年度にはコロナの影響で減少に転じ、2020年度は大きく落ち込みましたが、2023年度には2013年度と同じくらいの水準まで回復しており、他の駅に比べても回復が早いことがわかります。
なお、新潟駅では山形県庄内地域方面の羽越本線の特急いなほとの接続もありますが、特急いなほが停車する駅の利用者数はどの駅も横ばいか減少しているかのどちらかなのでその影響はあまりなさそうです。
また、外国人観光客については新潟県も新潟市も全国的に見ても少ないほうですし、この期間中も少ししか増えていないので、外国人観光客の利用が増加したわけではありません。
単純に日本人の利用者が増加しただけです。

上越新幹線越後湯沢〜新潟間の平均通過人員と北陸新幹線長野〜金沢間の平均通過人員を比較して見ましょう。
越後湯沢〜新潟間と長野〜上越妙高間では1000人〜4000人程度の差しかなく、上越妙高〜富山間では数10人〜3000人ほどしか差がありません。
特に2019年度はコロナの影響もあったものの、かなり差を縮めているのがわかります。

参考として2024年の新潟駅〜東京駅間と金沢駅〜東京駅間の直通の定期便の本数も比較してみましょう。
どちらも定期便の本数は24本と同じで、北陸新幹線金沢延伸開業から9年以上が経過しても変わらないのです。
つまりこれはどちらも利用者数に大差がないことを意味しています。
これは平均通過人員のデータの裏付けとしても有効な資料になります。

上越新幹線高崎〜越後湯沢間は大幅に減少したものの、新潟県内区間である越後湯沢〜新潟間は増加しており、しかも北陸新幹線長野〜金沢間と比較しても数千人の差しかないことがわかりました。
沿線人口は減少してしまっているのは事実ですし残念ではあるものの、外国人に依存せずとも上越新幹線の利用者数(首都圏から新潟県へ行く人)を増やすことができ、しかも北陸新幹線と大差がないくらいの利用者数になっているというのはすごいことなのではないでしょうか。
それにしても、なぜマスコミはこのことをいっさい報道しないのでしょうか?不思議ですね。
また、このことからわかるのは上越新幹線は北陸新幹線金沢延伸開業後も地位が低下しているとは言えず、上越新幹線沿線の人口の方が若干少ないことも考慮すると、むしろ地位が向上していると言えるのではないでしょうか。
それに努力次第ではもっと上越新幹線の平均通過人員を伸ばすことが可能だということで、北陸新幹線の平均通過人員を超えることも可能だということが言えます。
今後も新潟県の魅力が高まるような政策や取り組みを継続してやってもらい、上越新幹線の利用者数が増えるようにしてもらいたいと思います。
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